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銭谷整形外科クリニック 銭谷雅博先生より
N O −3 スポーツ選手の腰痛(その2)
スポーツ選手の腰痛の原因として、頻度は多くはないが、一度起こると治療
に長期間を必要とし、なかには手術が必要になるものがあります。椎間板ヘル
ニア、腰椎分離症、腰椎終板障害などの骨や椎間板に異常を起こすものです。
く腰椎分離症〉
成長期のスポーツによって脊椎に起こった疲労骨折であると考えられて
います。診断にはレントゲン写真、C T撮影、が必要です。分離症の初期で
あれば、3〜6カ月間のスポーツの全面禁止と腰椎コルセット固定で骨癒合を
期待できますが、初期の治療のチャンスを逃しますと、手術治療でなければ
骨癒合させることは難しくなります。分離症があっても腰椎周辺筋肉の強化
訓練などを徹底的に行うなどして、スポーツに復帰することは可能ですが、
当然正常の人よりも腰痛はおこしやすくなります。また分離症のあるままで
腰に強いストレスのかかるスポーツを続けますと、脊髄神経の障害などの
合併症を起こすこともあります。
〈椎体終板障害〉分離症と同じく成長期のスポーツ障著です。推体(背骨を
構成する骨)の成長軟骨にストレスが加わって、疲労骨折を起こすもので、
進行すると椎体や椎間板の変形を残し、成長終了後にも腰痛の原因となります。
分触症と同じく症状がおさまるまでスポーツ活動を休止し、以後、状態に応じた
機能訓練が必要です。なかには脊髄神経の陣容を起こし、手術が必要になる
場合もあります。
〈腰椎椎間板ヘルニア〉
椎間板は椎体の間にあるクッションのようなもので、背骨にかかる屈伸や
捻りの力をうまく吸収する働きをしています。しかし、繰り返し強い力が
加わってくると椎間板が変形し、変形した椎間板が腰や下肢に伸びている
神経を圧迫して神経に炎症が起きて痛みを起こします。痛みが強いときには、
楽な姿勢で横になったり、コルセットを使ったりして安静にします。神経の
炎症を押さえ、痛みを和らげる目的で、消炎鎮痛剤の内服や、時には神経
ブロックなどの注射も行います。ほとんどの場合、これらの治療で症状が
治まりますが、神経の障害が極めて強い場合や、特にスポーツ選手の場合で
長期間の安静ができない場合は、手術が行われることがあります。最近では
ヘルニアの種類によっては経皮的髄核摘出術やレーザー治療などの、患者に
とって負担が少なく、早期にスポーツに復帰できる治療法も行われています。
いずれの場合もスポーツに復帰するためには、安静、薬物、手術などの治療で
症状が治まった後に、他の原因による腰痛と同じように、リハビリを根気よく
続けることが必要です。専門医と選手、指導者が連携して、回復の度合いに
あわせて、徐々にスポーツに復帰させていきます。