-----------------------------------------------
銭谷整形外科クリニック 銭谷雅博先生より
N O −3 スポーツ選手の腰痛(その1)
スポーツ障書としての腰痛の大半は、背骨や背骨の回りの筋肉の強度を超え
たスポーツ活動を行ったことによっておこります。長時間の練習や過密な試合
日程による疲労の蓄積、スポーツ動作が腰に負担のかかる不適当なものである
、長年にわたって腰の同じ部位の筋肉や関節に負担をかけてきた、などが原因
となります。だいたいの内訳は、筋肉や関節に過度な負担がかかって起こった
腰痛症が6〜7割、打撲や捻挫などのケガによるものが2割、椎間板ヘルニアや
、疲労骨折と考えられている腰推分離症、その他が1割です。
また、このような痛みが起こってきますと、人間は無意識のうちに腰部の痛み.
を和らげるような婆勢をとり、この婆勢を続けることによって、腰部の筋肉に
不自然な緊張が起こって慢性の腰痛となっていくこともあります。
腰痛疲や、打撲、捻挫などのケガによるものについて述べます。
〈腰部捻挫、腰推関節症〉
捻挫は腰をひねったとき、脊椎の関節に強いスト レスがかかって生じます。
急激な痛みを起こします。また、同じ方向の捻り動作ばかりを行って関節に
負担をかけ、慢性の椎間関節症になることもあります。急性に発症したものは、
患部のアイシングを行い安静にします。慢性となっているものは逆に患部を
冷やさないようにする工夫が必要です。
〈腰部筋、筋膜炎〉
腰部の筋肉に過度の負担がかかって起こる、筋肉の疲労や肉離れです。
疲労であれば、アイシングや,マッツサージなどで筋肉の血行を改善するこ
とで対処できますが、肉離れを起こすと、筋肉の修復に数週間を必要とします。
〈スポーツ復帰のための治療〉
これらの腰痛の多くは、安静、薬物療法、理学療法などで痛みは改善します。
しかし、スポーツ選手には時間的に安静にすることができない人も多く、治療
にはいろいろと工夫が必要になります。痛みがよくなってスポーツに復帰しても
再び腰痛を起こす人もおります。スポーツ選手として復帰するには、単に日常
生活での痛みがとれただけではだめで、リハビリをきちんと行って、スポーツに
必要な筋力や筋肉の柔軟性などを十分に回復させる必要があります。
スポーツ動作(ピッチングフォームなど)の問題や、過密な試合日程、筋肉の
ストレッチング不足などが原因であることも多く、このような場合は選手のみ
ならず、監督、コーチなどの現場のスタッフも含めて治療に取り組むことが
必要です。痛みや筋力の回復をみながら練習メニューを組んでいき、問題の
あるスポーツ動作、練習日程は改善をしていきます。
「とりあえず、痛みさえ治まればよい。」という考えでは、スポーツ選手の腰痛
は治りません。