2003年4月1日号(NO.152)    

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 岩手医大学生の頃(もう40年も前のことです)学校へ通う途中の街角で花屋のショーウインドーに、見慣れぬ花が飾ってあるのを見つけました。緑の長い剣のような葉、根元から根茎のように膨らみ、4〜5条の長く伸びた茎に薄緑の花をたくさんつけていました。
 あまり派手な花ではないのですが、なんとも気品にあふれていました。花の名前が知りたくて、花屋の中に入り、それが洋ランだと知りました。通学途中で毎日見かける花がどうしてもほしくなりました。
 値段を聞いてびっくりしました、当時で1200円、下宿代が月6000円位の時代でしたので、今の価格にしても10000円位だったと思います、なんとも高価で気品がありました。
学生の身分ではとても買えない花でしたが、後先を考えずに思い切って購入しました。
 2日後、父の誕生日でした。花輪線の汽車に乗り、大事に大事に抱えて帰省しました。
 「お前、この花、何だか知っているのか」
 「洋ランだよ」 洋ランが花の名前と思っていました。
「これは、シンビジュームと言う洋ランだ、栽培が大変なんだ」思いがけないプレゼントに父はびっくりし、喜びました。
 それから、父と共に本を探しました。そして温室の作り方や、培養土、温度、湿度など、試行錯誤を繰り返しながら、庭先に小さな温室を作りました。これが、私の洋ラン栽培の始まりです。
 それから40年、何度も何度も枯れそうになりました。植え替え、植え替えして、今年も父にプレゼントした同じ時期に殊のほかたくさんの清楚な花をつけました。
 亡き父の誕生日にびっくりした顔を思い出します。
 品種もふえました。華やかで、カラフルでそれでいて気品あふれる洋ランの花々、部屋の中にランの花があるだけでも周りが明るくなるような気がします。
 温室も二棟になりました。
(O.K.)

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