平成14年7月9日号(NO.144)

ホールインわん

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 最近、ホールインワンが流行っている。M先生、N先生、S先生の奥さんと続けてホールインワンを達成され、苦しい立場にあった能代のゴルフ場の主も大喜びしている。何はともあれ皆様おめでとうございます。私も一生に一度はやってみたいものだと思っている。N先生の話によると二千五百回に一度は達成出来るとのことであり、私に当てはめてみると百五十歳まで頑張れば何とか達成できそうなので気長にやることに決めた。

 実を言うと、私はとんでもないホールインわんをしでかしてしまったことがある。昨年の夏に、ほろ酔い気分で好物の白桃を食べていたところ、ぽろっと手から桃の種が離れた瞬間であった。愛犬コロスケがホールインわんと言って、カパッと巨大な桃の種を飲み込んでしまったのである。その時は酔いも一瞬に醒め、医師として冷静に思考を巡らせた?まず、ハイムリック法にて除去すべきか?しかし、コロスケはケロッとしている。とすると、気管内異物ではないから胃の中にあるはずだ。異物除去をすべく喉頭内に指を突っ込んで吐かせるか?それとも病院に連れて行って内視鏡下に摘出するか?リスクを十分検討して、全身麻酔下にて異物摘出術を行うべきか?麻酔医は愛犬家のK先生にお願いすることとして、等々考えていると娘が、大きな声で「お父さん、いい加減にしなさい!コロスケに謝りなさい!」と言われて、はたと我に返って、コロスケに心から謝った。3人の息子たちには「コロスケは8万円もしたんだよ。お父さんどうすんだよ!」と言われ子供の教育を間違えたかと反省させられた。最後に賢妻が「経過観察しかないでしょう!酔っぱらいは早く寝なさい!」の一喝でその日は終わった。

 翌日よりコロスケは嘔吐を繰り返したために、近くの某獣医を受診させた。「この高価な注射をして、この高額な薬を飲ませればお尻からでてきますよ。大丈夫ですよ!」と言われて安心して帰ってきた。しかし、コロスケの状態は改善せず、下痢症状も出現しやせ細り、いよいよ重篤になってきた。父親の権威は失墜し、家族崩壊の危機に陥ったために、私は自称獣医の方々に second opinionを求めた。返ってきた貴重な second opinion は1)幽門輪は大きく必ず排便と一緒に出てくる。2)信頼できる秋田の獣医の先生に紹介状を書くからすぐに取りに来なさい。3)犬は強く、腸が破れても自然に治る。4)桃は丹毒があり、もうだめだから早くお墓の準備をした方が良い、等々であった。

? しかし、どの second opinion も当たらず、第十二病日にコロスケは自分の力で真っ黒の桃の種を嘔吐し、自力で治してしまった。あっぱれ!コロスケ様であった。second opinion が流行っているが一番大切なのは信頼できるかかりつけの本当の獣医さんを見つけることが大切だと痛感した。 

 先日、コロスケは無事に二歳の誕生日を迎えた。よくぞ生きてくれたと、コロスケに感謝しながら家族で盛大にお祝いをした。

 最後に、この文面をお借りして酔っぱらいながらも、親身に私の愛犬のことを思いやって下さった自称獣医先生の方々に厚く御礼を申し上げます。
(T,T)

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