平成14年6月25日号(NO.143)
ツーハン
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夜、仕事もぜーんぶ終えて風呂から上がり、ではではと冷蔵庫からビールを取り出してテレビのスィッチを入れる。やってますねぇ、ツーハン。
なんでこんな夜中にツーハンやっていると思います?あっ、ツーハンっていっても外国語じゃないですよ、通信販売、略してツーハン。なんでかって言うとですね、これ、酔っぱらいがターゲットなんですね。大体こんな夜中に素面でテレビ見てる人なんていないじゃないですか、そこなんですね、付け目は。
あのツーハンの宣伝、日中素面で見ていたって、「チッ」とか「ケッ」って舌打ちするくらいで、注文しようなんてまぁ思わないですよね、大抵は。
ところがですね、あれ夜中にビールを飲みながら見ていると、「こーんないいもんがあったんかい」、「今すぐにでも注文しないとこりゃいかんわ」っていう気になってしまうんですね、不思議と。またうまいんだ、あの宣伝に出てくる、昔流行った俳優の言うせりふが。気が付くと、手が受話器に伸びて、指が0120・・・をプッシュしている、とこういうことになるなんですね。
あの「どんな物でも切れる包丁のセット」、家族に白い目で見られたままどこ行っちゃたんだろ。「車が新車のようにピカピカになるワックス」、一回も使わないうちに固まってしまったな。「図形が思いのままに描ける」っていう線引きと分度器が一緒になったようなやつ、孫の手代わりに背中をかいたら折れちまったな。
小生、これだけは人に知られることなく墓まで持って行こう、と胸にしまっていることがあるんです。言うまいと思っていたんですが、ネタ切れなんで思いきって言っちゃいます。でもこれ言うと、罵詈雑言、嘲り、怒りの声が降り注ぐのは必至です。でもネタ切れなんで言っちゃいます。
「ツーハンのダイレクトメールで、チョーシンキを買いました、聴診器です」。ほら、「ちよ、聴診器ッ!!俺らにメシを食わせて下さる聴診器様を事もあろうに、ツーハンでッ!!」って、ホラ怒ったでしょう、バカにしたでしょう。でも「ナンタラの働きのあるマイクが内蔵して、カンタラの作用でどんな音でも拾える」ってきれいなイラスト入りで描いてあるダイレクトメールの魅力に、勝てなかったんです。
すいません、悪かったです、もうしません。それにしても、聞こえたのはカルテをめくる雑音だけでした。
今日も何かのダイレクトメールが送られてきています。これ、このままゴミ箱に捨てれば、なんて事なく世の中平和に行くんですよね。それ、自室に持って行っちゃいけないっていうの、夜中にビール飲みながら封を切ると、いつの間にか手が受話器に伸びて、指が0120・・・ァァッ。
(I,S)
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