2002年7月10日号(NO.132)
秋田県人は血圧が高いのか?
高血圧は日常診療上最もポピュラーな疾患であり、脳卒中県と言われる秋田県にあってはその一番のリスクファクターである高血圧については一般の人々の関心も極めて高い。 血圧のコントロールのせいか脳卒中死亡は激減して来ているが、人間ドックの成績を年次的に比較してみると血圧は必ずしも下がってはいない。悪者は血圧だけなのか? 血圧はどの程度にコントロールしたら良いのか?悩みは尽きない。 日本高血圧学会から新しい指針が示された事を機に、手始めに能代市山本郡の高血圧の実態について調べたのでそのポイントを紹介する。 対象は平成11年度当院人間ドック受診者で男性2772名、女性3114名の計5886名であり、平成十年国民栄養調査と第4次循環器疾患基礎調査と比較した。 図1に新しい分類による高血圧の性、年齢階級別頻度を示す。男女共年代が増す毎に軽症と中等症高血圧が増加している。男女共50歳代までは約6割が正常高値以内であるが60歳以上になると軽症以上の高血圧が半数を占める。女性の39歳以下を除き重症高血圧が各年代に見られるのは注目される。 図2に最高血圧平均値の性、年齢階級別成績を示す。39歳以下の女性を除きいずれも当院の方が低い。最低血圧もほぼ同様の結果である。 図3にWHOの以前の基準にそって高血圧、境界域、正常の3群に分け比較した。39歳以下を除き高血圧、境界域共に当院の方が少なく、正常は当院の方が多い。このように我々能代市山本郡の血圧は決して全国レベルより高くはなくむしろ低めであり高血圧の人も多いとは言えない事が明らかになったがこれで安心して良いものなのだろうか?確かに脳卒中死亡は減少してきてはいるがそれでも秋田県はまだ全国トップであり当地域は県平均をも上回っている。その原因はどうも高血圧だけではなく糖尿病など他のリスクファクターとの複合的な影響を考えざるを得ない。 これからは血圧の管理のみにとらわれず、肥満、脂質、糖代謝、尿酸、心電図など全身的管理が必要である事を今更ながら再認識させられた結果ではあった。 (注:図1、2,3は割愛されました)(K.O) |